東工大 数理計算科学系 院試体験記

こんにちは

超天才清楚系病弱ボクっ娘JSの楓です。

 

昨日、東京工業大学(なんか東京科学大学になるらしいので実質ミレニアムサイエンススクール)数理計算科学系(通称JS*1の大学院入試に合格したので、タイトルの通りその体験記を書こうと思う。

さて、ここまで読んでいただいた情報を収集したいだけの読者には、ボクが真面目に書く気がないことを察してブラウザバックしていただけたことだろう。

とはいえ、院試前の心にも時間にも余裕のない学生に私の駄文に付き合わせるのは申し訳ないので、重要な情報はこのように太字で書くことにして、流し読みするだけで必要な情報を得られるように配慮しよう。受験生でない方は全て一言一句余すことなく読みましょう。

長い前書きはこの辺にして、いざ本題に入ろうか。

 

自己紹介

まず簡単に自己紹介、というかボクのバックグラウンドを紹介しよう。背景が違えば院試の体験記を見ても全く参考にならない可能性が高いので、最初に言っておく必要があるだろう。

 

これが最も重要な点で全てを語りきっている点ではあるが、ボクは内部生である。つまり現在(2023年9月時点)、東京工業大学情報理工学院数理計算科学系に属しているB4である。

ところで数理計算には大まかに3つの分野が存在することをご存知だろうか。それは、数学分野、応用数学分野、計算機科学分野である(正式な名称が他にありそうだが、調べるのめんどくさいめう)。この中でボクがどの分野の研究室に属しているかというと、数学分野に属している。専門は代数トポロジーということになるのだろうか。まだ"研究"の段階にまで入れておらず、"勉強"の段階なので確たることは言えない。

つまり、ボクはゴリゴリの数学徒(じゃあなんで数学系じゃないんだというツッコミは控えていただこう)ということなので、もちろん院試の問題は数学の問題を解いた。

院試の概要

募集要項を読め!以上!と言いたいところだが、優しいボクは簡単に説明しておくことにした。以下にリンクを貼っておくが、受験生の方は必ず自分が受ける年度の募集要項を参照するように。

大学院修士課程・専門職学位課程2024年4月及び2023年9月入学

院試には実は2種類あることはご存知だろうか。それはA日程とB日程のことである。今回ボクが受けたのはB日程の方である。この違いは何かというと、A日程は学部の成績が優秀だったりすれば筆記試験を受けずに面接のみの試験が行われ、B日程は筆記試験と口頭試問の両方が課される試験である。

さて、この説明を聞いて「じゃあこの筆者はA日程受けられなかったんだなぁ。雑魚が!」と思ったそこの君、残念だったな!数理計算はB日程しか存在しないんだよ!バカめ!

重要な情報は太字にする関係上、先に数理計算にB日程が存在しないことに目がいき、そんな感想を抱く読者はいないんじゃないかということに気づいたがもう遅い。

 

では、ここから具体的に院試で何を課されるか、という話をしていこう。

まず出願の時点で外部英語試験のスコアシート志望理由書の提出が求められる。

ボクはキメ顔でTOEIC725点を提出した。

さて、1番の難関はこの志望理由書である。ぶっちゃけ筆記試験より難しい。そもそも大学院に行きたい理由なんて就職したくないからしかない。ボクはこの難局をとりあえず興味のある分野をひたすら書き並べることで乗り切った。日頃から関心の幅を広げていたことが幸いした。

残りは筆記試験口頭試問である。

筆記試験について少し細かく説明しよう。詳しくは過去問を見ろ!数理計算はめっちゃ公開してくれてるから!

www.titech.ac.jp

筆記試験は9:00~12:30の3時間半で行われる(早過ぎる)。問題形式は基礎科目3つのうちから2つ、専門科目9つのうちから3つの問題を選んで解くことになる。

正直、数理計算の筆記試験はそこまで難しくない。せいぜい期末試験レベルの問題が出る程度である。期末試験が無い科目や外部から受けにくる人は難易度がわからないって?......次に行きましょう。

口頭試問については、具体的にボクが体験したことを踏まえて後で説明しよう。

 

そんなこんなで、TwitterのFFがA日程で合格内定を勝ち取っているのを嫉妬の眼差しで見ながら筆記試験の勉強をする日々が始まった。

勉強方法

ここからはおそらく読者が最も気になっているであろう勉強方法について語ろうか。ここまでで既に2000字に達している事実にボクは驚きを隠せないが、それでも承認欲求 後輩を思う慈愛の自己犠牲精神で最後まで文章を書くとしよう。決して自愛の精神ではない。

閑話休題

まず始めたのが過去問に目を通すことである。そして目を通すだけでなく、ぱっと見でどう解くのかというのを考えていた。そして大体の問題は解けてしまった。ここで勉強のやる気が一気になくなった。解けるのだから。これが春休みぐらいのことである。

とはいえ、解けたと言っても方針が立ったという程度のもので実際計算なり答案を書いたわけではないので、これで勉強終わりというわけにはいかない。また、ここで肝となるのが大体の問題が解けたということだ。つまり、解けない問題も存在したのだ。あろうことか、その問題は代数だった。一応自称専門なのに。

言い訳を1つさせてもらうと、代数が専門とはいえボクが普段やっているのは主に加群論だ。群論や環論にはそこまで明るくない。対称群の性質とか知らない人だった。

できないのなら解かなければ良い、と考えるのが普通だろう。せっかく専門科目9題のうち3題を解けば良いという親切設計なのだから。しかしそれはできなかった。一応とはいえ、専門を自称しているのだから。それはボクのプライドが許さなかった。

そこで、この全く解けない問題に対してどのように勉強して解けるようにしようとしたかというと、手持ちの代数の教科書の演習問題を全て解くことで対策とした。これがかなり勉強になったので、解けない分野の対策としてこの方法をおすすめする。一般的な専門書というのは演習問題の解答が略解だったり問題によっては無いものもあったり数値だけ書いて過程を書いていないものがあるのが普通だ。だが、それが良い。ちゃんと自分で考えて解くので、ただ解答をみるだけ以上に身につき、それでもわからない時は他の文献をあたったりする必要があるので更に勉強になる。

やっていた教科書は桂代数である。

https://amzn.asia/d/gZv7Zaf

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これは余談だが、大学受験の時も最初の方はできるだけ解答を見ずに問題を解くようにしていた。ある程度の答えが出せるまで解答を見ないという縛りを設けていたので、普通に1問に2時間とかかけている時もあった。

院試の話に戻って、他にも不安が残る分野に関しては教科書を読み直すなどしていた。

 

ここまでが勉強法の前半フェーズである。後半フェーズはいよいよ本番環境に適応した勉強をしていた。個人的な考えとして、このような試験一発勝負のような勉強は前半は時間を考慮せず思考する、後半は時間を測って本番のように解くというのが重要だと思っている。(なぜか大学受験界隈で前半は軽視されがちだけど)

ここまでの話の流れから、時間測って解いてたんやろなぁ...というのは察しがつくとは思うが、具体的にどれぐらいの時間で何を解いていたかというのを説明しよう。

先ほども言ったが、数理計算は過去問が充実していて20年分ぐらい公開されている。これをひたすら解いていた。本番環境と言ったが、3時間半ぶっ続けを毎日やってるとしんどいので、1問を30分で解くというのを目標にひたすら回していた。1問を30分で解ければ1時間余る計算になるので、本番の緊張などを考慮すると妥当な目標であると言える。

しかしながら、これが普通に難しい(あたり前田のクラッカー)。パッと見で方針を事前に立てていた問題でも、細部を詰めて穴のない答案を書こうとするとしんどかったり、単純に計算量がアホな問題も多く(確率論とか統計とか特に)、厳しかった。最初のボクのようにパッと見で解けるから勉強しなくていいや〜と思っている学生がいるのなら、認識を改めた方が良いだろう

このような反復練習を経て、最終的にはほとんど30分で問題を解けるようにまで成長した。

ここまでの話で読者は1つの疑問を抱いたかもしれないが、その回答は次の章ですることになる。

ワクワク院試勉強会

前章の最後で述べたボクが想定する疑問とは「最初に勉強のやる気が出なかったのに、なんかめっちゃ勉強してる感があるのはなぜ?」ということである。他の疑問は知らん。実際、ボクはめっちゃ勉強したと思う。系の中で1番勉強したんじゃないかという自負があるぐらい勉強していた。

この疑問に対する回答が、この章のタイトルであるワクワク院試勉強会である。ボクが勝手にワクワクしていただけで、特にワクワクに意味はない。

この勉強会はボクが主催したもので、7月序盤から始めて計6回セミナー室を借りて開催した

これを開催しようと思ったきっかけは後付けしようとすればいくらでも出来るのだが、直接的な要因は数学系の友人Haruくんが院試勉強会をやっていて楽しそうだったからである。Haruくんに圧倒的感謝。

 

勉強会で何をしていたのかというと、発表者が自前で自分の得意分野の過去問を解いてきて、それと周辺知識を皆の前で発表するという形式で行っていた。この発表をするために勉強をする必要があるので、強制的に勉強をするという環境をこれで手に入れた。

この勉強会はボクを含めて基本参加人数は4人であったため、少し寂しかった。zoomを繋いではいたが、遅刻した人専用窓口のようになっていた。

差し入れで持ってきてくれたミスドがマジで美味しかった。圧倒的感謝。

 

正直に言うと院試勉強会で得た知識がなくても合格していただろうが、勉強会がモチベ維持に多大なる貢献をしてくれたことは間違いないので、必要なピースであった。参加してくれた人に圧倒的感謝。

悪夢の筆記試験前日

試験というのは前準備で勝負のほとんどが決まるというのは言うまでもないだろう。ここまでその前準備は全てにおいて完璧であった。"その日"、目を覚ましてケータイを見るとそこには15時と書いてあった。おかしい。"その日"の前日は2時ぐらいに寝たはずなのに。ボクは院試前日に15時に起きるという愚行を犯してしまったのだ。思い出して欲しい。試験の開始時間は9:00である。ここからボクは試験会場に時間通りに辿り着くという最大級の敵と戦わねばならなくなった。

とはいえ、やってしまったものはしょうがない。ここからいかにして時間通りに辿り着くかを考えるべきだ。この日はいつもは2杯飲むコーヒーを1杯しか飲まないことで対策した。

そして、試験に辿り着けた時を想定して院試RTAチャートを作った。こういうことを考えておくのは重要だと思う。

書いてある通りだが、位相が1番自信があったので、それを1番最初に解く計画でやっていた。

 

そして夜中には寝れない院試勢と傷の舐め合いをして精神統一をした。眠れなくても布団に入って目を閉じるだけで変わるというのはわかっていたので、徹夜はしなかった。入眠。

緊張の筆記試験当日

起きた!起きれた!やった!ボクの勝ちだ!最悪の睡眠グラフをしているけど!むしろほぼ寝てないので起きたという表現で正しいのかすら怪しいが、ボクは勝ったのだ。後は無事に登校するだけである。ボクは愚か者でないので、入試当日の朝に北白蛇神社に行ったりなどしない。

緊張と寝不足で吐きそうだったが、必死の形相で耐えて満員電車に揺られて無事に辿り着いた。試験会場の教室の鍵がなかなか開かずに、廊下で待たされて非常に暑かった。ここは改善して欲しい。

 

試験が始まる。始まった。結論から言うと、全完した

びっくりするぐらいチャート通りに進んだ。

問題は、位相→線形代数微分積分→代数→確率論の順番で解いた。最初は解けなかった代数の問題も見事に解いて見せたのだ。チャート通りなら、確率論ではなく関数解析を解くのだが、今年は微分方程式が出ておりそれよりは確率論の方が得意だったので、こっちを解くことにした。

余裕すらあったので、普段は省略するような部分も細部まで書いた。なんなら最後の30分はやることがなくて暇だった。普段の期末試験なら途中退室をキメてドヤ顔で帰るところだが、流石に院試となるとそれはしなかった。チャートは守るものではなく、チャートに守られるものという言葉を改めて実感したのであった。

(全完したと言ったが、実は"正規部分群であることを示せ"という問題で正規なことだけ言って部分群であることを確認し忘れたというあるある過ぎるミスをしているが、そのミスは気づかなかったことにして全完である。異論は認めない。ミスは気づかなければミスではないのだから。また、あえてここを太字で書かないことで太字だけを読んでいる不届者には全完したとしか受け取られない効果を狙っている。そもそもここまで読んでくれている読者がいれば、の話だが。)

 

院試を終えて上機嫌なボクは、スシローに行って帰ってティアキンを始めた。書いている段階では、まだティアキンはクリアできていない。やることが多過ぎる。

波乱の口頭試問

全てが上手くいっている時ほど、何かイレギュラーが存在する。

「滅多にないことがその日に限ってよく起こる」(HUNTER×HUNTER,24巻,No.258)

とは、HUNTER×HUNTERのキルアの言だったが、この章はそういう話である。イレギュラーであるため、この口頭試問が受験生の参考になるかはわからない

 

口頭試問の日である。この日まで準備したことといえば、想定される質問を考えたり自分が書いた志望理由書を見返していたぐらいである。それで十分だと思っていた。

口頭試問はzoomを介したオンラインで行われ、この日も物凄く緊張をしてはいたが、問題なく口頭試問は始まった。

開始から3分ほどで異変は起こった。数人いた先生のほとんどがzoomから落ちたのである。ボクは何が起こったかわからなかったが、残った先生から大学が停電したということを聞いた。こんなイレギュラーがボクの口頭試問中に直撃したのだ。たまったもんじゃない。残った先生はノートPCから入っていたため、停電の影響を受けなかったのだという。もし1人で残されたらと思うとゾッとする。

 

それでも口頭試問は続行された。本来質問を受けるはずの第1志望の研究室の先生ではない先生から質問を受ける形になった。めちゃくちゃ怖かった。

質問の内容自体は、今どんな研究をしているのかこれからどんな研究をしていきたいか、などの質問がされて、筆記試験の内容に関する質問はされなかった。先輩からは解けなかった問題に対する質問が来ると聞いていたので、拍子抜けだった。これがイレギュラーによるものなのか、単にボクが全ての問題を解けていたから故なのかが判断できないので、あまり鵜呑みにすることはないように注意していただきたい。

 

そんなこんなで、口頭試問も無事に(?)終えた。受かったということは無事ということで良いのだろう。

完走した感想

無事に受かりました。

こんな画像いくらでも捏造できるので証拠にはなってないんだけど、一応、ね。

これで就活を後1年先延ばしにすることに成功して、すごく嬉しいです(激浅感想)。

たぶんここまで勉強しなくても受かること自体はできたと思います。

しかし、ボクの中の戦闘民族の魂が中途半端は許さず、完璧を求めてこのような結果を得ることができました()。

さて、ここまで厨二な私の自分語りに付き合ってくださった方がいるかは不明ですが、読んでくれた方に圧倒的感謝。

これから、やる気が出れば趣味の話とかのブログを書くかもしれません。(数学の話は怖くてできない。)

*1:なぜ数理計算がJSと呼ばれているのかについて説明が必要だろう。情報理工学院の数理計算の対の存在、そう情報工学系が全ての元凶である。察しの良い読者はもう気づいたと思われるが、情(J)報工(K)学でJKと呼ばれているのだ。そして数理計算は情報科学系とも言える(実際教員の中にそう呼んでいる人もいる)ので、情報ScienceでJSなのだ。単純に数理計算のSかもしれないが、この辺は曖昧だ(ネットスラングなんてそんなもん)。ちなみに工学院情報通信系はJCと呼ばれている。